研究概要 |
音声の個人性は音声上の静的特徴と動的特徴に現れる.前者は個人の声道形状に起因する先天的な特徴であり,後者は方言や話し方の癖などの後天的な特徴である.本研究では,経時的な変動が少ないと考えられる静的特徴を研究対象とする.そして,静的特徴が顕著に現れる母音を研究対象にする. 声道形状の3次元計測 声道形状の個人差を明らかにするために,精密な3次元声道形状をMRI(核磁気共鳴装置)により計測した.被験者は数名の20代の男女である.撮像は,母音を発声した状態で矢状面方向と横断面方向に行った.ぶれが生じやすい声帯付近をクリアに撮像するためのパラメータについて検討を行った. 「響き」に関する声質についての検討 「響き」や「通りの良さ」と表現される声質について,スペクトルと声道形状について調査した.声道実模型による合成音声の分析から,響きを感じる合成音声ではそうでない合成音声と比較して2〜4kHz付近のスペクトルピークが顕著に高いことを明らかにした.さらに,この声質は声帯付近の声道形状の微妙な違いにより生じることを明らかにした.これは,従来報告されてきた,プロ歌手の歌声に現れる"singing formant"と呼ばれるスペクトル上の特徴や,アナウンサーの音声に現れる特徴と同種のものであると考えられる.同様の結果は,等価回路モデルを用いたシミュレーションでも確認された.
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