研究概要 |
本年度は,申請者らが,最適化モデルを対象とした問題定義のための記述言語-GERM-がシミュレーション・モデルを記述するにも有効であることを示し,このGERMを起点として,最適化モデルとシミュレーション・モデルのインタラクティブなデータのやりとりを可能とする新たなアーキテクチャを提案した。 昨年度までのサーベイの結果,シミュレーション・モデルと最適化モデルの統合環境を実現するアプローチとして,(1)シミュレーション・システムに,最適化パッケージを埋め込むアプローチ,(2)最適化システムを拡張し,動的システムの扱いを試みるアプローチ,(3)シミュレーションや最適化に特化しない記述の仕組みから,その双方の扱いを試みるアプローチに分類される。各アプローチには一長一短があるものの,検討した結果,(3)のアプローチがよいことが分かった。特にGERMは,計算機モデルを生成する前に構築するとされる概念モデルの記述言語として有効である。シミュレーションの計算機モデルには,(a)システム・ロジック,(b)実験フレーム,(C)アニメーション・モデルが含まれるが,この場合の概念モデルとは,(a)システム・ロジックを構造化したものである。 計算機モデルで利用される変数とGERMで構築されるオブジェクト型の型属性の対応付けによって,GERM記述から計算機モデルへの橋渡しが可能となった。これはGERM記述から数理モデルヘの橋渡しを可能にした結合条件に相応する。GERMはデータ・モデリング利用に開発された実体-関連モデルの拡張であるから,具体的数値例を関係表に蓄積する仕組みを容易に組み込むことが可能である。数学モデルや計算機モデルとは別次元の問題記述と具体的数値例の入出力を起点とすることで,新たなレベルのモデル/ソルバー独立を実現し,当初の目的である最適化モデルとシミュレーション・モデルの統合環境を可能とした。
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