研究概要 |
本年度は、まず国内における越境環境問題として、複数の自治体にまたがる水資源管理に着目し、特に水道水源保護に関する実態調査をおこなった。具体的には、水源保護条例の制定状況を既存資料の収集、ヒアリング・現地調査(市原市、いわき市、水戸市、道志村)により把握し、どのような地域特性が水源保護条例の制定を促すのか検討を行い、その成果の一部は環境経済政策学会の2001年会(京都)において発表を行った。 海外における調査として、国内と同様に複数の自治体をまたがる水道水源保護へ向けた取組み事例として、米国ニューヨーク市がその水道水源地域の自治体と協働で実施している水道水源保護の取組みを、ニューヨーク州水資源研究所におけるヒアリングや関連資料により把握した。1990年代始め、900万人の人口を抱えるNY市は、悪化していたその水道水質を改善するために、新規の浄水ろ過装置を建設するために多額の投資をするか、あるいは水源地域周辺の用地取得により開発規制を行い水道水質を保全するか、という選択を迫られていた。その結果、1997年、NY市は水道水源地域である複数の郡(county)と歴史的な協定に調印し、水源地域における用地取得に対する理解と協力を取り付けると同時に、包括的な地域振興プログラム、そして下水・雨水処理史跡の整備に対する財政支援等を約束した。その際、NYC市は、"Rules and Regulations for the protection from contamination, degradation and pollution of the New York City Water Supply and its sources"という規制を作成している。来年度は、NY市における水源保護の取組みと国内における水源保護の取組みを比較研究を行いつつ、規制の評価枠組みを実証的に示す予定である。
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