研究概要 |
ペロブスカイト型酸化物は、比較的単純な結晶構造でありながら多彩な物性を有する物質群として古くから研究されているが、それらは個々の化合物ごとに行われているのみで系統的研究は少ないのが現状である。 そこで本研究において特にウラン含有ペロブスカイト型酸化物に注目し、その基礎物性を系統的に研究することとした。ウラン化合物は重い電子系に特有の特異物性を有する可能性が有り、そこから新奇エネルギー変換機能の発現が期待できる。またウラン化合物で高性能機能性材料が開発され、それが実用化されれば、核燃料サイクルから大量に回収される劣化ウランの有効利用にもつながる。 具体的な研究成果は以下の通りである。BaUO_3,BaZrO_3,Ba(U,Zr)O_3を合成し、その各種物性間の相関を研究した。種々の物性間の相関において、BaZrO_3は典型的なペロブスカイト型酸化物にみられる傾向を示したが、BaUO_3は酸化物でも金属でもなくガラスに近い挙動を示した。なおBa(U,Zr)O_3はBaUO_3とBaZrO_3の中間の傾向を示した。BaUO_3の電気抵抗率、ゼーベック係数、熱伝導率から無次元性能指数ZTを求め、熱電変換材料としての適用性を評価した。その結果、優れた点とて、熱伝導率が非常に低いこと、ゼーベック係数の絶対値が比較的大きいこと、が、また一方改善が必要な点として、電気抵抗率が実用材料と比べて4桁程大きいこと、などがわかった。今後キャリアを添加すること等による電気的特性の最適化が必要ではあるが、BaUO_3は高性能な熱電変換材料となる可能性を有していることがわかった。
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