研究概要 |
自動車粉塵に含有される化合物の生体内への移行過程について 前年度の結果に基づいて、自動車由来粉塵(タイヤ、アスファルト粉塵、排ガス粒子、路上粉塵)に含まれる化合物の水-粒子間分配係数(K_p)を算出し、化合物の粒子との親和性を検討した。PAHs、含酸素PAHs、フタル酸エステル、ベンゾチアゾール類、ロジン酸、アルカン、脂肪酸について分配係数を算出でき、その値は10^3〜10^5の範囲であった。全種類の粒子態試料についてK_pを算出できたのはフタル酸エステル類のみで、粒子の種類によるK_p値の差異は認められなかった。これらの粉塵からの化合物の溶出には、粒子の性質は関係なく、化合物の疎水性が重要な要因であることが確認できた。 水中へ溶出した化合物の生体内移行モデルとして、ヘプタン含有セルロース膜バッグを水中に含浸させ、バッグ内のヘプタン相への化合物の取り込みついて調べた。BHAなどの酸化防止剤、PAHキノン類、フタル酸エステル類の標準物質を用いた系では、PAHキノン類と低分子のフタル酸エステルのみがヘプタン相に移行し、高分子のフタル酸エステルは水中に残存した。また酸化防止剤は取込みの間に分解された。水中の化合物の生体内以降において、化合物の疎水性だけでなく,分子サイズおよび化学的安定性が必要であることも分かった。 路上粉塵を用いた系では、粒子中に高濃度で含まれる化合物であっても,ヘプタン相へ移行するのは排ガス粒子由来のPAHsとタイヤ粒子由来の一部の化合物のみであった。排気ガスだけでなくタイヤ粒子が生体に与える影響は特に大きいのではないかと考えられる。 光照射の影響について 粒子態試料へ太陽光シミュレーターで光照射を行うと照射前に比べて含有する化合物の種類/量ともに大幅に減少した。タイヤやアスファルト粉塵、排気ガス粒子が環境中へ放出された後、時間経過とともに風化によって化学組成が大幅に変化することから生体影響のポテンシャルも変化するものと予想される。
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