研究概要 |
1)Dibutyl phthalate(DBP)はCCSPの発現レベルを低下させた Clara cell-specific secretory protein (CCSP)の発現定量のため、定量PCRを行った結果、DBPはClara細胞分化に抑制的に働くことが示唆された。 2)内分泌撹乱作用の分化制御因子への影響を検出 女性ホルモンである17β estradiol(E2)が肺細胞における調節因子HNF3αの発現を促進していることが示された。DBPは、E2と同様にHNF3αの発現を促進し、これらの因子が肺細胞分化に同様な抑制効果を引き起こしていることが推定された。しかしながらNonylphenolについては逆の結果で、E2、DBPとは別の経路で内分泌撹乱作用を引き起こしている可能性がある。さらにいくつかの内分泌撹乱化学物質の細胞への長期的暴露の影響を調べたところ、内分泌撹乱化学物質(Bis-phenol A, diethylstylbestrol (DES))に関しては分化を促進しており、分化の方向性に関してはそれぞれの化学物質が別々の効果を示した。 3)内分泌撹乱化学物質影響下にあるホメオボックス因子の検索 発生の初期段階に関与していると考えられる調節因子群であるホメオボックス遺伝子のうち、estradiolに反応するものを検索した。Bis-phenol A, DES, dibutyl phthalateの暴露が、濃度依存的にHoxA5の発現量を抑える傾向が示された。更に、HoxA4、A7、C8、C9の各因子についても影響が観察された。 まとめ)これらの結果より、内分泌撹乱化学物質の作用は分化の方向性を曖昧にして、細胞分化に悪影響を及ぼしている可能性があり、それぞれの化学物質ごとに別々の因子を標的にしていることが考えられる。
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