研究概要 |
本年度は本研究計画の初年度にあたることから,実験を行う予備段階として現在,報告されているガス状水銀の除去技術に関する研究状況について再度調査を行った. 現在行われている研究は,大きく分けて湿式法と乾式法に分類されるが,いずれも金属水銀を水溶性のHgCl2に変換することで,洗煙水へ吸収あるいは集塵器で煤塵ともに吸着させて除去する方法について実験的に検討が行われている。しかし,実プロセスを想定した場合,洗煙水を用いる湿式法においては洗煙排水処理や炉内の腐食が,バグフィルタ等の集塵器を用いる乾式法においては排ガス中の塩素分濃度や温度によってHgCl2への変換率が左右されることが課題になっていることが明らかとなった. 既存の技術が抱えるこれらの問題解決を目的として,本研究では燃焼炉排ガス中に含まれるガス状水銀に対して硫化剤を用いて水銀の硫化物化し,排ガス中の塩素分に影響されない乾式固定化技術を提案し,ガス状水銀の硫化物化に関する実験的検討を行った.本年度においては,各種金属硫化剤を金属水銀ガスと反応させたときのガス状水銀の硫化反応特性の違い及び硫化反応による生成物の同定の実験を行った.金属硫化剤としてはCuS,FeS,ZnS,Na2S2,Na2S3,Na2S4を用い,ガス状水銀を吸収させたところ,硫化鉄、硫化亜鉛がほとんど反応しなかったのに対し,CuSは42%の吸収率を示した.多硫化ナトリウムについては,化学式中のSの数が増えるにしたがってガス状水銀吸収率も増加した.しかし最も高い吸収率を示したNa2S4でも吸収率は1.8%にとどまった.ガス状水銀吸収後の金属硫化剤試料中の化合物を同定したところ,CuS,Na2S3,Na2S4においてHgSを確認したことから,これら化合物を用いることによりガス状水銀が硫化水銀へと化学置換され,吸収・固定化させたことが実験的に確認された.
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