研究概要 |
本研究では、海産神経毒シガトキシン類等に特有な縮環型ポリエーテル構造の構築を目的として、ポリエポキシドを経由した効率的合成法の開発を行っている。具体的には、活性化されたエポキシドへの隣接エポキシドの求核攻撃-環拡大反応によるオキセパン骨格の形成を目指した。反応の検討に際しては、3位にのみメトキシメチル基を有する2,3,6,7-ジエポキシド体を環化前駆体とした。これは3位置換基のキレーション効果で2,3-エポキシドをルイス酸により活性化し、6,7-エポキシドの2位選択的求核攻撃を期待したものである。ルイス酸としてランタントリフラートを用いて反応を行ったところ、低収率ではあるが3,8-dioxabicyclo[3.2.1]octane誘導体を与えた。反応機構は未だ明確ではないが、これはオキソニウム中間体を経て生成したと考えられる。また7員環を含む構造であることから、当初の戦略によるオキセパン骨格構築に向けた重要な前進である。その他の生成物はオキシラン型化合物であり、3位にカチオンが生成して4位で脱プロトン化の後に環化したもの、及び、2位のプロトンが3位に転移してケトン型になった後に環化したもの、などであった。副生成物とはいえ、これらは計画通りに2,3-エポキシドが活性化されていることを示唆している。 研究期間全体を通して要約する。オキセパンを含む縮環型ポリエーテルの合成において、「エポキシアルコールの連続環化」はジエポキシド以上では困難であることを示した。よって「活性化エポキシドへの隣接エポキシドの求核攻撃-環拡大反応反応」との組み合わせが必要であると考えられる。また後者の反応については、キレーション効果によるエポキシドの選択的活性化が可能であるという知見が得られた。同時に新規合成法の可能性をも示し、効率的合成法への道を開いた。
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