哺乳類の生体内において一酸化窒素(NO)は、一酸化窒素合成酵素(NOS)により、L-アルギニンと酸素分子より合成される。このNO分子は、血管拡張、筋弛緩、細胞の殺菌、記憶など、様々な生理的機能に関わる細胞間の情報伝達物質として働いている。生体内で合成されたNOは、細胞膜や組織中を自由に拡散して標的タンパク質と直接相互作用する。現在、知られているNOの標的タンパク質であるグアニル酸シクラーゼは、NOが結合するとGTPからセカンドメーッセンジャーであるcGMPを合成し、血管を拡張させる。しかしこのタンパク質にNOが結合したという情報が、どのように同じ分子内にあるcGMP合成部位に伝達されるのか?全く理解されていないことが現状である。そこで、本研究では、アニル酸シクラーゼの分子内情報伝達機構をX線結晶構造解析手法による解明することを目的とする。 酵素のX線結晶構造解析に向けて、大量に試料を調整を行って、単結晶作成条件の検索(現有クリスタルスクリーン等を用いる)を行った。その結果、硫安溶液とPEG4000の沈澱剤で結晶が得られた。酵素の結晶は5-6Åくらいの分解能を示した。また、構造解析に向いた良好な結晶化の条件ではないが、様々の結晶化条件の検索が必要であると考えられる。現在、クリスタルスクリーン以外の約800種類bufferを作製して、構造解析に向いた単結晶の条件を検索して行く。
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