研究概要 |
昨年度から引き続き、ユビキチン結合酵素RAD6によるヒストンH2Bの部位特異的モノユビキチン化反応の分子機構を解析した。まず、出芽酵母のヒストンH2A、H2B、H3、H4、それぞれに対してユビキチン化を行なったところ、全てのヒストンがマルチユビキチン化された。この反応では、ヒストン分子内の複数のリジン残基に対してユビキチン化が起こっていることが示唆された。したがって細胞内では、ヒストンのユビキチン化が高度に制御されていると考えられる。ところで、ユビキチン化と同じヒストン修飾の一種であるアセチル化では、ヒストンシャペロンとヌクレオソーム形成がその修飾の制御に重要であることが示唆されている。そこで、H2AとH2BのヒストンシャペロンであるNAP-1に着目し、NAP-1がヒストンのユビキチン化に与える影響を解析した。その結果、NAP-1の存在下では全てのヒストン(H2A、H2B、H3、H4)に対するユビキチン化が抑制されることが明らかになった。次に、このユビキチン化の抑制に必要なNAP-1の機能領域を決定するために、種々の欠失変異体を作製し、ヒストンのユビキチン化に対する影響を解析した。NAP-1は417アミノ酸残基からなる蛋白質であるが、そのC末端領域51アミノ酸残基を欠損した変異体ではRAD6によるユビキチン化抑制能が低下した。以上の結果から、ヒストンのユビキチン化が他のヒストン修飾と同様に、ヒストンシャペロンとヌクレオソーム形成によって制御されている可能性が示唆された。一方、ごく最近、細胞内でヒストンH2Bをユビキチン化するユビキチンリガーゼの存在が明らかになった(Mol Cell.,2003,11(1):pp.261-6、Mol Cell.,2003,11(1):pp.267-74.)。今後は、このユビキチンリガーゼも含めて解析を行なう必要があると考えられる。
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