研究概要 |
マビシアニンは、ズッキーニの皮から単離される糖蛋白質で、活性中心に銅イオンをもつブルー銅蛋白質である。他のフィトシアニンファミリーに属するステラシアニンやBasic Blue Proteinと比べ、アミノ酸残基の数と相同性に大きな違いがあり、分子進化的にも興味がある。本研究では、スペクトル等の機能と配位構造との相互の関係、他のブルー銅蛋白質との構造比較、および分子進化に関する知見を得るために、新規なブルー銅蛋白質であるマビシアニンの高分解能のX線構造解析を目指して、結晶化から着手し、運良く結晶が得られたSubmitted to Acta Cyrst. Sect D.) これまで、再現性の良い結晶化方法を確立し(空間群P6_1,a= b= 62.78Å,c=243.78Å)、大型放射光実験施設SPring-8において、低温下、銅イオンの異常分散効果を利用したMADデータの収集を行った。ピーク(1.379Å)、エッジ(1.380Å)、リモート1(1.393Å)、リモート2(1.305Å)でのデータ収集を、それぞれ2.0Å分解能まで収集することに成功した。異常分散差パターソンの計算およびその解釈にも成功し、位相の確からしさを示すFigure-of-meritの値も0.565と比較的高い値を示し、良好な電子密度を得ることに成功した。 分子モデルの構築を行い、酸化体については、1.6Å分解能までの構造精密化を終えている。 還元体結晶についても結晶を調整し、大型放射光実験施設SPring-8において1.9Å分解能までのデータ収集を行い、現在構造の精密化を進めている。 今後は、還元体構造についての構造精密化を行い、両者の構造の比較を行って、酸化還元にともなう構造変化について検討する。またステラシアニンとの構造比較を行って、酸化還元電位の違い、スペクトルの違い等について構造化学的に検討を加え、論文発表を行う予定である。
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