研究概要 |
RNAポリメラーゼII(Pol II)第1サブユニット(Rpb1)のC末端ドメイン(CTD)は、7アミノ酸残基による高度反復配列で構成され、転写サイクルの中で高度リン酸化、脱リン酸化を繰返し受ける。これが最も顕著なPol IIの制御機構である。昨年度までに、Rpb1遺伝子にエピトープタグ配列を導入した分裂酵母株から、Pol II基本転写因子TFIIF、CTDの脱リン酸化を担うホスファターゼFcp1の複合体の単離に成功し、Pol II第4サブユニット(Rpb4)がFcp1をPol IIに結合させ、CTDの脱リン酸化を促進する機能をもつことを明らかにしている。今年度は、1.試験管内転写系でのFcp1-Rpb4相互作用の果たす機能を解析するため、解析に有効な分裂酵母株の抽出液による試験管内転写系の構築を行った。 2.Rpb4の機能解析のため、野生型Rpb4の発現停止後に部分欠損をもつ変異Rpb4を発現する酵母株を作製し、変異Rpb4の細胞内での機能を解析した。N及びC末端領域は細胞の生育には不要であるが、C末欠損Rpb4は優勢の生育遅延を見せた。また、致死性変異Rpb4はPol IIへの集合が見られなかった。Rpb4の機能とその作用機構について引き続き解析中である。 3.Fcp1遺伝子にエピトープタグ配列をもつ分裂酵母株から、Fcp1を含む新規複合体である可能性の高い蛋白質複合体を単離した。大量精製と構成因子の同定を検討中である。 4.酵母細胞内でのFcp1、TFIIF、Pol IIの動態について解析するため、Fcp1、TFIIFの細胞内分子数を定量した。細胞当りPol II-10,000分子に対し、Fcp1-3,500、TFIIF-20,000分子であった。
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