研究概要 |
今年度は平成13年度において確立したRNA干渉発現抑制系を用い、各インテグリン裏打ち蛋白質群の細胞運動制御や細胞形態維持における役割を検討した(投稿準備中)。また本系を用いることにより、並行して解析を行っていたチロシンリン酸化paxillinとp120RasGAPの結合を介した低分子量G蛋白質Rhoの活性制御機構の存在を証明することに資することができた(JCB 159,673-683,2002)。 チロシンリン酸化の基質となりうるインテグリン裏打ち蛋白質、paxillin, p130Casおよびそれらの上流のキナーゼであるFak, Pyk2について、RNA干渉発現抑制による細胞形態および運動性の変化を観察したところ、HeLa細胞、およびHUVEC(ヒト静脈内皮細胞)のいずれも上皮系の細胞においてのみFak, paxillinの発現抑制下において、通常観察されない20μmを超える突起の形成が観察された。Pyk2,p130Cas発現抑制下においては著明な形態変化は観察されなかったが、細胞運動性の低下が観察された。Fak, paxillinの発現抑制による異常形態の形成は、運動に伴う細胞基質間接着消失の失調に随伴するものではなく、細胞骨格の一成分である微小管系の細胞内部からの異常な伸長によるものであった。さらに詳細な形態観察の結果、焦点接着の形成および微小管末端到達に失調が生じていること、それに伴いCLIP170で可視化される微小管伸長が異常突起内に濃縮していることが観察され、チロシンリン酸化シグナルを伴うインテグリンシグナルが微小管構築において重要な役割を果たしうることが新たに示唆される結果となった。
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