研究概要 |
[研究目的] 胎生期ストレス負荷ラットを成ラットになるまで飼育し,成長後の情動・記憶機能に対する胎生期ストレスの影響を明らかにする。 [研究成果等] 1)胎生期ストレス負荷ラットの作製:受精後10日目(E10)の妊娠ラットを入れた飼育用ケージを,反復寒冷ストレス装置(現有)内に設置し,出生予定日(E21)の2日前(E19)まで同装置内で飼育することにより,胎生期ストレス負荷ラットを作製した。ストレス非負荷妊娠ラットから出生したラットを対照ラットとした。これらのラットを成ラット(8週齢以上)まで飼育し、以下の実験に用いた。 2)成ラットの情動・記憶機能に対する胎生期ストレスの影響 情動・記憶機能を明らかにするために,当教室で独自に開発した場所学習課題をテストする。まず,報酬性の脳内刺激(ICSS)用電極を埋め込む。埋め込み手術回復後,スキナー箱を用いてレバー押しによるICSSの訓練を行った。各4群のラットにおける電流強度には差がないことから,報酬獲得行動あるいは動機付け行動そのものには影響がないことが明らかになった。レバー押し訓練後,ラットを直径150cmの円形オープンフィールド内に置き,場所移動課題(円形オープンフィールド内に報酬場所を2ヶ所設定し,ラットがこの2ヶ所の報酬場所間を交互に移動すれば,それぞれの報酬場所でICSSを獲得できる。このためラットは,報酬場所を学習し,記憶することが要求される)を行った。ストレス負荷群では,課題試行中に移動を休止するという行動の途絶が認められ,場所学習課題の学習が有意に障害された。このような現象は,不安の亢進や帯状回の破壊でしばしば認められる現象であり,大脳辺縁系に何らかの機能異常が生じていることが示唆された。
|