新規ジーントラップベクターの構築と機能確認 マウス胚性幹(ES)細胞ゲノムに欠失(数kb〜数百kb)を引き起こすための新規ジーントラップベクターを4種類構築した(GT-a、-b、-c、-d)。レポーター遺伝子としてはLacZとEGFPを用い、薬剤耐性遺伝子としてはネオマイシン耐性遺伝子neoとハイグロマイシン耐性遺伝子Hygを用いた。Neo-LacZでセンス転写ユニット(IRESを介したdicistron)を成し、Hyg-EGFP(融合遺伝子)でアンチセンス転写ユニットを構成している。本研究では、シングルジーントラップのみならず、ダブルジーントラップも想定している。従って、上記4種類のベクターの1つ『GT-a』にはneo-LacZユニットとHyg-EGFPユニットのどちらにもプロモーターを付していない。『GT-b』〜『GT-d』は『GT-a』のコントロールベクターである。『GT-b』と『GT-c』については片方のユニットそれぞれにプロモーターを付けてあり、『GT-d』にはどちらのユニットにもプロモーターを付けてある。 マウスES細胞へ遺伝子導入する前に、構築したベクターが細胞内できちんと機能するかどうかを調べるための実験を行った。ラットアストログリオーマ由来のC6細胞に、リポフェクション法によって一過性及び永久的にそれぞれ遺伝子導入した。その結果、『GT-b』『GT-c』のベクターを用いた実験から、センス及びアンチセンス転写ユニットはどちらも機能的であることが分かった。また、『GT-d』を用いた実験から、両ユニットが各プロモーターでダブルドライブされた場合にもセンス-アンチセンス転写ユニットは同時に独立して機能することが分かった。また、ノーザン解析、鎖特異的RT-PCR解析によっても、両ユニットの適切な転写を確認した。 従って、本研究の遂行に必要なベクターの構築が確認され、レポーター遺伝子(LacZ、EGFP)や薬剤耐性遺伝子(neo、Hyg)が機能することが分かった。これらベクターを用いて実際にES細胞に遺伝子導入し、ゲノム欠失を伴った細胞株の樹立を目指す。
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