研究概要 |
本研究は脳マラリア発症に関与する宿主遺伝子を単離・同定することを最終目的として、昨年度に引き続き、ネズミマラリア原虫(Plasmodium berghei ANKA)感染に対して脳マラリア感受性を示すCBA/N系統と抵抗性のDBA/2系統の交雑群を用いた連鎖解析より、脳マラリア発症に関与する宿主遺伝子の存在領域の特定を試みた。 CBA/N系統とDBA/2系統から戻し交配群を作成し、各個体に8〜10週齢でP.berghei ANKAを5×10^6個感染させ、脳マラリアを発症する個体を調べた。220匹の戻し交配個体のうち68匹が脳マラリアを発症し、これらの個体について全ゲノム領域をカバーするように設定した58種のマイクロサテライトマーカーの遺伝子型をPCR-SSLP法により判定した。χ^2検定により各遺伝子型の期待分離比(1:1)が有意に分離比が偏っている(P<0.01)マーカーを調査した。 その結果、4種の染色体(Chr.1,11,14,16,17)上に分離比が極端に偏っているマーカーが見出され、これらの染色体上には脳マラリア感受性遺伝子の存在が示唆された。これまでに、本研究で用いた脳マラリア感受性系統は別のマウス系統(C57BL/6J)を用いた連鎖解析により、脳マラリア発症に関与する3箇所の染色体領域が明らかになっているが、本研究で示された領域はこれらとは重複していなかった。したがって、脳マラリアの発症には多数の遺伝子が関与しており、それぞれの感受性系統(CBA/N, C57BL/6J)が異なる遺伝子により支配されていると考えられた。
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