研究概要 |
振戦疾患の早期鑑別支援システム開発の目的で以下の研究を行なった。 1.三次元振戦加速度解析による振戦疾患の鑑別 パーキンソン病患者(PD)34名、本態性振戦患者(ET)8名、健常高齢者(CN)11名を対象に3軸型加速度計にて上肢母指基部での加速度を計測した。得られたX, Y, Z軸の加速度データを合成し、ベクトルの大きさを評価した。これにより、1軸型加速度計では正確に計測できなかった振戦の振幅を正しく評価できるようになった。また、もっとも実効値の高い軸について、加速度波形を周波数解析し推定周波数、歪度、方向余弦成分(Level-3)を求めることで、PD, ET, CNの鑑別指標として有効であることを確認した。また、姿勢時の振戦加速度と、安静時の視線加速度を計測し、その比をとることにより、安静時振戦が特徴的なPDを抽出できるか調べた。 本年度の研究では被験者となる本態性振戦の患者が少なかったため、鑑別パラメータを選択する際にPDよりのデータとなってしまったため、正判別率は78%にとどまる結果となった。しかしながら、平成15年3月現在において本態性振戦患者の被験者数が増えたことにより、正判別率が86%まで向上した。さらに、これまでは60%を超えることがなかった新規被験者(鑑別パラメータ選定の際に用いなかった被験者)データにおいて、77%の正判別率が得られた。 2.三軸型加速度計をもちいた振戦疾患の重症度評価 上記振戦加速度解析に加え、振戦加速度の周波数分布から4-6Hz(L帯域)、6-10Hz(H帯域)を定義し、各々の帯域におけるピーク強度とピーク周波数をそれぞれL, LF, H, HFとして各振戦疾患との比較および重症度との相関を調べた。その結果、ピーク強度LとHの比(L/H)が、各振戦疾患群において特徴付けられる傾向が見られた。また、PDの重症度評価に用いられるYahrの重症度と振戦加速度実効値の左右差に相関が見られた。これらは、PDの一般的な観察所見と一致し、パーキンソン病の重症度を評価する客観的なデータとして有用であることがわかった。
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