研究概要 |
本年度は,胸部X線CT像に対する肺腫瘤の良悪性鑑別のための特徴量の開発,階層的な分類法の開発,および特徴量開発のための基礎的検討を行った.これらは良悪性鑑別のための診断支援ツールの基盤となる.概要を以下に示す. (1)肺血管(動脈,および静脈)を生成元として3次元拡張ボロノイ分割を行なった.腫瘤周辺,および肺野全体での生成されたボロノイ領域の平均体積の比を求めたところ,集束(悪性腫瘤に見られることが多い所見)の有無に関して有意な差があることを確認した.また,最近傍則による認識実験の結果,認識率は69%であった. (2)従来の肺腫瘤に対する計算機支援診断では,腫瘤を良性,あるいは悪性のいずれかのカテゴリに分類することを目的とするものが多かった.しかし,良性・悪性ともに多様な種類が存在するため,かならずしも高い認識率は得られなかった.一方,医師はある種の良性腫瘤を画像所見のみから良性であると判断できる.そこで,このような良性腫瘤を計算機によって認識することにより,良悪性鑑別の認識率の向上を図った.6個の特徴量を用いて判別実験を行なったところ,認識率は78%であった. (3)特徴量開発のための基礎的検討として,肺動脈を生成元としたときの拡張ボロノイ領域を求めた.その結果,ボロノイ領域の境界が葉間胸膜,および肺静脈と密接な関係を有することが明らかとなった.この結果は特徴量開発のほか,葉間胸膜の抽出などの肺内構造物の解析にも利用できる.
|