研究概要 |
機能的電気刺激(FES)システムの制御命令入力装置として,ジャイロを用いて頭部動作を検出する入力装置を試作したが,その入力装置で検出される頭部の角度には誤差が生じた.そこで,本研究では試作した制御命令入力装置にニューラルネットワーク(NN)を適用し,画像解析により得られた頭部の角度データを教師信号とした学習を行わせた.NNの構造は3層パーセプトロン型,結合荷重の学習は誤差逆伝播法を用い,被験者は健常者1名(23歳男性)とした. 具体的には,まず頭部動作の画像計測を行い,画像解析ソフトWINanalyzeを用いて,頭部の角度データを求めた.次に,ジャイロによる検出角度を入力信号,画像解析による頭部の角度データを教師信号として,NNの学習を行った.そして,制御命令入力装置の評価実験として,NNの学習前と学習後のそれぞれにおいて,制御信号を目標信号(正弦波と折線波)に追従させるように頭部動作を行ってもらった.ここで,被験者に大きな頭部動作を行わせるために,両信号を液晶プロジェクタを介してスクリーンに投影した. 実験結果より,目標信号と制御信号の平均誤差を算出した結果,目標信号が正弦波の場合,NNの学習前と牛較して学習後には47.3%の誤差が低減された.また折線波の場合,平坦部のみの平均誤差を求めると,NNの学習後には86.2%の誤差の低減が示された.FESによる上肢の動作再建の場合には,必ず動作を保持する必要が生じるため,確実な動作の保持が重要となる.このような観点から,NNを制御命令入力装置に適用することはFESシステムの操作性の向上につながり,本入力装置は有用であると考えられる.
|