研究概要 |
有機・無機複合型ELディスプレイの高性能・高機能化を目指し、多孔質Si(PS)層を含めた電気的光学的構造設計を進めた結果、以下のような研究成果が得られた。 1.光照射陽極化成法による多孔質Si層から波長550〜750nmの可視発光を観察し,化成時間と光照射強度に依存して禁止帯幅を1.6〜2.3eVの範囲で制御できる。有機膜のPVK(ポリビニルカルバゾール)と組合せた結果、PS層によるホールブロック作用が効率改善に有効となる基本原理を見出した。 2.上記結果1から独自の高分子/低分子複合構成を考案し、C6(クマリン)蛍光色素を添加した緑色発光で視感効率10.2-1m/W、外部量子効率5.5%を実現した。この値は蛍光色素では世界最高レベルに相当する。同時に、TPB(トリフェニルブタジエン)、NR(ナイルレッド)の色素共添加により、視感効率4.2-1m/W、外部量子効率3.8%、色度座標(0.33,0.33)の高色純度・高効率な白色発光が得られた。 3.上記結果2を基本として、α-NPDを発光色素として用いた新規な青色EL構造を考案した。励起子閉じ込め効果により、視感効率3.7-1m/W、外部量子効率5.1%、色度座標(0.15,0.09)の色純度に優れた世界最高レベルの青色発光が得られた。これにより、蛍光色素を用いた複合型有機ELにおいて、高効率な3原色および白色発光が得られた。 4.その他の要素技術として、フレネル理論と特性マトリクス計算の組み合わせによる独自の有機EL用の光学解析プログラムを作製した。同技術を利用した横結合型色変換方式有機EL構造を考案し(特許出願済み)、理論限界(5%)を超える量子効率7.0%の白色発光が得られることを示した。 更なる研究課題として、(1)多孔質シリコン層の製造技術の簡略化、(2)赤色ELの高効率化、(3)信頼性と安定性の改善が挙げられる。
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