研究概要 |
本研究では,農業生産を含め,社会経済的な変革期にあるミャンマーの農村地域を対象に,第一に一筆単位の区画図(クウィンマップ),郡・集落単位の作付けデータを収集・整備した.第二に,これら収集データを用いて対象地域の地理上県の把握を試み,農業を主とした水利用・水環境上の特性・制約を空間的に明らかにするとともに,リモートセンシングデータの解析およびGISを用いた分析等を通して,水利用・水循環の秩序性/かんがい開発の地域農業に及ぼす影響などを考察した. 上ビルマかんがい地域を対象とした研究結果として,伝統的な農業体系が,土・水環境に対して調和的に構築されてきたこと,同時にそこで展開されている農業が栽培・管理,経営等に関係する社会経済的な要素により土・水環境に対して非調和的になり得ることを示した.同時に,かんがい施設整備にともなうかんがい面積の拡大などの水循環の改変が,生産性向上のための化学肥料,農薬,高収穫品種導入の誘因として働き,地下水やポンプを利用した新たな水循環をベースとする集約的な農業の展開により,塩類集積などの土壌・環境劣化の危惧を助長していることを明らかにした. さらに,下ビルマ(マグエ管区レグー群)におけるかんがい開発にともなう農業・水利用の変容に関する考究を行い,かんがい開発が稲作と換金性の高い多様な作物栽培により維持されていた安定的な作付け体系を乱す方向の農業の出現を促している可能性があることを示し,かんがい開発では政策上の支援を含め,より合理的・総合的な作付け,土地利用,水利用に関する地域農業のデザインと連携する必要があることを明らかにした. また,本研究では調査対象地の図幅としての筆図(クウィンマップ)をデジタル化することでGISデータとして整備するとともに,1995〜2000年の期間を中心とする各種農業データ,農地利用データ,水利用データの収集整備も行なった.
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