研究概要 |
生物には幅広い形態多様性がみられる。この生物多様性は1)遺伝子上に起こる突然変異によって表現型の多型の生成、2)その多型にかかる自然選択の二つのステップによって創造されると考えられる。ウニはモデル生物としてよく研究され,特に幼生の骨格形成については遺伝子レベルでの研究が進んでいる。本研究では,まず形態の詳細な記載をおこなった。そこではまず発生過程で比較的安定な形質を見極めた上で、各形質の計測を行い、体骨格の長い種ほど小突起を多く持つ傾向があることなどを明らかにした。幼生骨格形態がなぜ多様であるかという問いに対し,これらの結果とナガウニ科ウニ類の緯度分布との情報を統合すると,骨格形熊の進化には,海水の密度に対する適応や幼生骨格の重心の調整といった,物理的な要因の影響が大きいことが示唆される.体骨格が長いと小突起が多くなるという相関(LBLとSNの相関)については,幼生の体勢を保持するためという物理的な制約により生じている可能性が考えられた.一方,幼生骨格形態の変異は発生の制約により生じている可能性も考えられた.ごく近縁な種間でも変異の大きい体骨格の形状は,骨格形成時の三ツ矢状骨片の位置や向きのずれにより変化することが示された.さらに、ナガウニ科の15種に関して系統関係の推定を行い,幼生骨片形態の進化過程を推定した。幼生骨片多様性の機能的な側面も解析し、"ウニ類の幼生骨格形態の多様性"の進化史について,変異の創出から変異が淘汰される過程までの,進化の全プロセスについての研究が可能となる.本研究の結果は,そのような研究の第一歩として貢献できると考えられる.
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