配分額 *注記 |
123,370千円 (直接経費: 94,900千円、間接経費: 28,470千円)
2005年度: 19,760千円 (直接経費: 15,200千円、間接経費: 4,560千円)
2004年度: 26,000千円 (直接経費: 20,000千円、間接経費: 6,000千円)
2003年度: 26,000千円 (直接経費: 20,000千円、間接経費: 6,000千円)
2002年度: 26,000千円 (直接経費: 20,000千円、間接経費: 6,000千円)
2001年度: 25,610千円 (直接経費: 19,700千円、間接経費: 5,910千円)
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研究概要 |
本研究課題は、大腸菌をモデルとして細菌の異物排出タンパク質の網羅的解析、発現調節機構の解明を行い、新たな抗菌剤の創薬ターゲットを探る事を目的として開始された。本研究課題直前に、私たちは大腸菌の全推定異物排出タンパク強制発現ライブラリを世界に先駆けて作成していた。それを用いて、MFS, SMR, RND, ABCという代表的な4類型に分類できること、及びそれらの薬剤排出タンパクとしての性質を様々な方法で解析した。なかでも、RND群5種類全て、MFSの中で2つ、ABCの一つと全部で8種類の排出タンパクが全て同じ外膜蛋白TolCと共役することを発見した。ABCやMFSはアミノ酸配列からはTolCと共役できる巨大なペリプラズム領域は無いと思われていたが、部位特異的化学修飾法によりABCのMacB、MFSのEmrBのトポロジー決定を行ったところ、巨大なループ領域をペリプラズム側に持つ構造であることが証明された。 RND型の代表的な異物排出タンパクAcrBについては、異物排出タンパクとして世界で初めてX線結晶構造解析に成功した。この結果、異物の認識が、細胞質膜外層からの基質の取り込みによるものであることが明らかとなった。 発現調節機構については、細菌の環境感知応答システムである二成分情報伝達系により異物排出遺伝子発現誘導が成されることを発見した。複数の二成分系により、それぞれ複数の異物排出遺伝子発現が制御される複雑なネットワークを解明した。また、インドールが細胞間情報伝達物質として働くことを見出し、インドールによる異物排出遺伝子発現制御機構を詳しく解析した。さらに、異物排出遺伝子の発現制御は鉄イオンなどの代謝系とも密接な関係のあることが判明した。 異物排出タンパクは、異物の排出だけではなく、病原性の発現とも密接な関連性のあることを発見した。例えば、サルモネラ菌を経口接種するとマウスは一定期間後に死亡する。ところが、主要な異物排出遺伝子を全てノックアウトしてサルモネラ菌を接種しても死なない。なかでも、異物としてはマクロライド抗生物質のみを排出するMacABのノックアウトで病原性はほとんど失われた。これらの事実は、異物排出タンパクが異物の排出以外にも重要な生理的役割を蜷手いることを示している。菌を殺さず病原性だけを殺ぐ抗菌剤のターゲットとしての可能性を示すものといえる。
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