1.この研究では、認知科学・認知心理学等の分野での研究成果を活用することにより、データの収集と分析という、社会調査のステップのうち重要な2つの局面の水準を向上させることをめざした。本年度は、先行研究のレビューを行った。 2.データ収集法に関する近年の研究のレビューから、認知科学者・認知心理学者・言語学者等が、アメリカ合衆国におけるGeneral Social Surveyなどの有名な社会調査においても回答者の回答に歪みをもたらすような質問文が用いられていることを指摘していることが明らかになった。また、回答に歪みをもたらすメカニズムやそのような歪みを防ぐための調査票設計に関して、認知科学的計算理論やコネクショニズムにもとづく考察が行われていることも判明した。、 3.社会調査によって得られた意識データの分析に関しては、階層イメージに関するFararo=Kosakaモデルを1955-1995年社会階層と社会移動全国調査(SSM調査)のデータにより検証しようとした高坂健次の研究を、認知社会学的分析のパイオニアであると位置づけ、その検討を行った。その結果、上記のモデルからの予想とデータとの適合度があまりよくないこと、人々が自分の地位に対して抱く主観的評価が形成されるメカニズムに関する考察が依然として課題として残されていることが明らかになった。 4.平成14年1月28日付で研究廃止。
|