研究概要 |
まず,数理経済学における離散凸関数の応用について研究を進めた.不可分な財を含む経済均衡モデルにおいて,供給者の費用関数がM凸関数かつ消費者の効用関数がM凹関数の場合に競争均衡が存在することが,研究代表者らの昨年度までの研究において証明されていた.本年度はさらにこの研究を進めて,競争均衡を実際に求める方法について検討し,多項式時間で競争均衡が求められることを示した.具体的には,競争均衡を求める問題を元にしてM凸劣モジュラ流問題をつくり,これを既存の多項式時間アルゴリズムで解いて得られた出力を適切に変換することで競争均衡が得られる,という手法である.これはM凸劣モジュラ流問題の応用としても興味深い結果である. 次に,最適配分問題に対する効率的な解法の研究を行った.生産ラインでのバッファ配分や労働力・資源の配分など,生産システム設計の際に頻繁に現れる最適配分問題は,離散準凸性の理論を適用しやすい問題の一つである.離散準凸関数の理論を踏まえて,現実に現れる最適配分問題を定式化し,その離散構造を明らかにすると共に効率的な解法を提案した,具体的には,劣モジュラ制約の元での最適配分問題に対するHochbaumの高速解法がなぜうまく働くのかを離散凸性の視点から検討し,その結果を元にM凸関数に対する高速な最小化アルゴリズムを提案した. また,dial-a-ride transit system, isotone regressionなどに応用をもつ,双対最小費用流問題について研究を進めた.この問題が準L凸関数最小化問題の特殊ケースである,という事実を踏まえ,既存の解法を見直し,準L凸関数に対する解法へと拡張した.
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