研究概要 |
スクッテルド鉱型化合物LnT_4X_<12>(Ln = lanthanide, T = transition metals, X = P, As, Sb)は超伝導、金属一絶縁体転移、強磁性や反強磁性など多様な物性を示すうえ、熱電材料など実用面からも注目される興味深い化合物である。これらはスズフラックス法を用いて合成されるのが普通であるが、我々は高圧合成法を用いて多くの新スクッテルド鉱型化合物の開発に成功し、大きな成果を上げている。しかし単結晶の作製は行っていなかった。精密な物性研究には単結晶が不可欠である。スズフラックス法では単結晶の育成は可能であるが、大きな単結晶を造るのが難しい。中性子回折や超音波の測定には大型の単結晶を必要とするので、スズフラックス法は適当でない。我々はすでに黒リンの大型単結晶を高温、高圧下で育成させることに成功している。この技術を用いれば、スクッテルド鉱型化合物の単結晶の育成ができると考え、比較的単純で融点も低いCoP_3を取り上げた。CoSb_3は熱電材料としては最も研究されており、当然のことながら同族のCoP_3にも注目が集まっている。キュウビックアンビル型高圧装置を用い、CoとPを化学量論的にとり、高圧装置にセットして、3.5GPaまで加圧する。その後、温度を1100℃まで上昇させて、CoP_3をまず合成する。再び加熱して1600℃まで上昇させてCoP_3を融解した後、1分に約1℃の割合でゆっくりと温度を低下させる。約1000℃になった所で急冷した。取り出してみると大型単結晶の育成が認められた。ラウエ写真でも単結晶のスポットが見出された。スクッテルド鉱型化合物の高温高圧下における単結晶の育成は世界で初めて行われたものなので、現在特許を申請中である。CoP_3の熱起電力、電気抵抗率、熱伝導率なども測定し、熱電特性を評価し興味深い結果を得ている。
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