研究概要 |
本研究は,雷現象を今までの概念と異なり大地から調べる手法を開発することを大きな目標とした. (1)大阪府堺市の高圧線鉄塔の周辺で残留磁化を調べた結果,酒井他(2002)が被雷鉄塔で示した様な塔脚周囲で回転する磁化分布や塔脚からの距離に伴う磁化急減の特徴は無く,鉄塔は過去に落雷を被っていないと判断できた.栃木県氏家町の落雷地点(田圃)での結果も併せ,残留磁化により落雷履歴は十分検討できると結論できる. (2)雷の化石となった磁化から過去の雷撃電流を探る方法を開発したが,今後雷被害等の分野でも需要が大きいと考えられる.今年度は,磁化強度-距離の指数関係を詳細に調べ,更にIG(インパルスジェネレーター)の雷撃モデル電流を用いて,電流伝播が媒体の磁化特性(帯磁の強さ)に依存する可能性が指摘できた.整形が容易な紙粘土を用いた実験では,雷撃電流は試料内部への流入と共に試料表面への沿面放電があり,ビデオ撮影でも確認された.段階交流消磁では多成分の磁化が認められ,電流伝搬の経路変化が多成分磁化で判別できた. (3)富山県・岐阜県の県境および富山県東部で観測中の地電位差記録には,10km以上離れた電車の漏洩電流の影響とともに,落雷の影響も顕著であり,落雷頻度分布と誘導地電位差から,大地の電磁気物性(断層)の影響が認められた.また,2001年の中国地方での地震の際に落雷頻度がピークになっていることを見つけ,酒井他(2000)で示した同様な事例と併せると,これは偶然ではなく今後更に研究する必要性がある現象と考えられる.
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