研究概要 |
本研究は,海洋無酸素環境下で堆積した有機物に富んだサプロペル層と,無酸素環境下で形成される野いちご状パイライトに焦点を当て,堆積物形成過程における微生物活動を明らかにすることを目的としている。そのために,最終氷期にEuxinicな無酸素環境であった日本海の堆積物と酸化的な環境が継続した太平洋側の大陸斜面堆積物を対象として,堆積物中に創出された硫化水素環境の微生物群集の実態と地下においてそれが維持され続けるかどうかを明らかにする。 淡青丸KT01-15次航海の折りに採取した最終氷期の日本海に形成されたサプロペル層中には1cc当たり10^8〜10^9個の微生物がおり,その種構成の概要を明らかにした。主要な細菌は,Burkholderia sp.,Acinetobacter sp.を主体とした硫酸還元バクテリアである。これらのバクテリアは地層中の有機物を用いて盛んに硫酸還元を行っている。サプロペル層には硫酸還元環境で形成される野いちご状パイライトが数多く存在し,その結晶形態と大きさは酸化的な地層(ODP, Leg190)中の有孔虫殻内に形成されるパイライトとは異なっていた。サプロペル層は正八面体,酸化層は8-6しゅう形であった。2つの形態に注目してサプロペル層中での分布をみると層位的に大きく変動しており,堆積場の微小な酸化還元状態を反映している可能性が大きい。また,結晶の大きさも層位的に変化することから,結晶形態とサイズが硫酸還元細菌の活動度の良い指標となっている可能性が大きい。 研究の過程で堆積物中の微生物をコンタミネーションを防ぎながら採取する装置を開発した。現在,特許申請中である。
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