研究概要 |
植物硬組織の微量成分解析による生育環境の研究を以下の3つのテーマについて行った。 1)植物中に見られる代表的な生体鉱物としてシュウ酸カルシウムが知られている。シュウ酸カルシウムにはシュウ酸カルシウム1水和物と2水和物が知られているが、植物の種によって、1水和物を含むもの、2水和物を含むもの、あるいは両者を含むものがある。植物中では2水和物が安定に存在する。植物種によって異なったシュウ酸カルシウムが生成されることに着目して、結晶成長の環境にどのような違いがあるかを研究した。1水和物を含む代表としてばら目あじさい科アジサイ、近縁のウツギ、プラタナス、シロツメクサ、クズ、キイチゴ、ノイバラ、サクラを、また2水和物を含む代表としてあかざ目あかざ科ホウレンソウ、近縁としてシロザ、イノコヅチ、マツバギク、アメリカヤマゴボウについて調べた。走査型電子顕微鏡観察では、1水和物は針状の結晶であり、また2水和物は、薄板状の形態を示した。組成分析の結果は、両者の結晶及及び周辺にはSr,Mn,Pが同程度含まれており、結晶生成環境に大きな化学的な差はなく、結晶の選択制は生物的なものによる可能性が高い。 2)地衣類Peltigeraによる重金属元素の濃集を研究した。地衣類は特定の部位に異なった重金属を濃集する性質を有し、体内の細胞壁や多糖類などの吸収サイトと鉱物粒子が関係していると考えられる。U,Pb,As,Feなどの蓄積を部位ごとに測定した。 3)Zn,Ni,Cdなどの重金属を吸着することで知られるカラシナのウラン吸着について研究を行い、根や茎にウランが蓄積、その断面からウランを含む物質の塊状の集合体で存在することからウランが細胞内の他の元素と化合して安定化している可能性を見いだした。
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