本研究の目的は、火山から放出する火山ガスを火口や噴気孔から出る量と火山体から拡散放出する量とにわけ、両放出形態の量比が火山活動や構造のどの特性と対応しているか、その時間変化は火山活動の推移を見るのに適したパラメタかなどを検討し、両者の時間変化を火山の活動予測に結びつけることである。これまでに火山性CO_2の拡散放出の観測を行なった火山は、有珠山、北海道駒ヶ岳、樽前山、八甲田山、伊豆大島、三宅島、小笠原硫黄島、富士山、浅間山、阿蘇山、桜島などであるが、平成13-14年度には、三宅島、富士山、浅間山、および有珠山の中でも昭和新山で稠密な測定を行なった。昭和新山では火山性CO_2の拡散放出の大きい20×30mの地域で1mグリッドの測定を行ない、この領域内での放出量分布から、拡散放出測定における測定点密度についての基礎的な知見を得た。国内外の火山について、火山性CO_2の拡散放出量と、COSPECを用いて求められた火口・噴気孔からのSO_2放出量から算定されたCO_2の火口・噴気孔放出量とを比較すると、拡散放出量が大きい火山では火口・噴気孔放出量が無いかわずかな場合が多く、逆に火口・噴気孔放出量が大きい火山では拡散放出量が少ない。三宅島では2000年の噴火前には拡散放出が顕著にみられたが、噴火後は莫大な量の火山ガスの放出が続いているためか、拡散放出はみられない。同様の現象は有珠山2000年の噴火前後にもみられた。このように火山ガスの放出に関して、拡散放出と火口・噴気孔放出量とが相補的であることが経験的に示された。この問題は小笠原硫黄島における火山性CO_2の拡散放出の論文の中で詳しく検討を行なった。
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