研究概要 |
原子核と原子(電子系)が両方関わるような核ー原子分光ともいえる分野は,理論的には電子架橋過程や電子遷移による核励起(NEET)など種々の議論がなされているが,実験的には,申請者が以前精力的に行ってきたNEET現象で数例あるだけで,まだまだ未知の領域である。このような中で,^<229>Thに存在が推定されている超低エネルギー(3.5eV:内部転換過程不可)核異性体は,上記の電子架橋過程等の核ー原子合成系で起こりうる希現象の検証のための最適の実験場になりうる。 本研究は、^<229m>Thについて世界初の可視・紫外発光核壊変の観測を試み、化学状態が電子架橋過程を通して核遷移(半減期)を制御できる可能性を探ることを目的としている。そのため,以下の3種類の方法で^<229m>Thの製造を試み,光子測定とα壊変測定により^<229m>Thの検出と壊変特性の研究を行った。また,本研究助成金で光子測定装置の開発及び^<233>Uからの^<229>Thの迅速化学分離装置の作成を行った。 製造法-1 ^<233>U→^<229m>Th(^<229m>Th)迅速ミルキング法 これまで問題であった^<229>Thの親核種である^<233>Uからのα線の妨害を除去すべく^<233>Uから^<229>Thの迅速化学分離を導入し,光子測定を行った。 製造法-2 ^<228>Ra(n,γ)法 ^<232>Th中の^<228>Raを化学分離し,京都大学原子炉実験所Pn-2ポートで中性子照射し,^<228>Ra(n,γ)^<229>Ra→^<229>Ac→^<229>Th(^<229m>Th)により製造し、Thのみ分離し,光子測定を行った。 製造法-3 ^<230>Th(γ,n)^<229>Th(^<229m>Th)法 東北大学核理学研究施設の電子線による制動放射で高純度^<230>Thから製造・精製し,α線測定を行い,単寿命成分を探査した。 現在までの結果として,製造法-3によるα測定のみ有意な結果を得ており,他の方法では検出は困難であった。現在より詳細な解析と光子測定法の改良を進めている。
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