研究概要 |
今までほとんど研究されていなかった低分子有機ゲルの創製と、ゲルの光化学反応について検討した。光反応性ゲルとしてベンゾフェノン骨格に長鎖アルキル基(n=12,16,18)を、2本または1本アミド結合させたゲル成分を合成した。水素供与性ゲルとしてモノ-およびジイソプロピルベンゼンに長鎖アルキル基をアミド結合させたゲル成分も合成した。次に種々の有機溶媒を用いてゲルが生成するかどうかを調べた結果、アルキル鎖が2本結合したベンゾフェノン系成分については、ベンゼン、トルエンなどの比較的極性の低い溶媒中でゲルは生成し易く、水素供与性溶媒である2-プロパノール中では少し不安定ではあるがゲルを形成することがわかった。ゲルの微細構造を走査型電子顕微鏡(SEM)を用いて観察したところ、繊維状3次元網目構造や5μm程度の球体の集合体が形成されていることがわかった。また、ベンゾフェノン系とイソプロピルベンゼン系の二成分系ゲルも作製したが、それぞれの成分のゲルが別々に生成し、分子レベルでの相互作用はないことがSEM観察、X線回折パターンより明らかとなった。 2本アルキル鎖のゲル成分(n=12)と水素供与性溶媒である2-プロパノールまたはトリイソプロピルベンゼンを用いて作製したゲルを光照射したところ、水素引き抜き反応が起き、反応の進行とともにゲルは溶解し、主生成物としていずれもピナコールを与えた。 さらに、ピリジルベンズイミダゾールに長鎖アルキル基を導入した新規蛍光性ゲルも作製し、蛍光特性を測定した。その結果、ゲルの蛍光スペクトルは溶液の蛍光スペクトルよりも、最大100nm長波長シフトするという新たな知見が得られた。
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