研究概要 |
本研究では,近接場光学顕微鏡SNOMをベースとし、100nmの三次元空間分解能で液晶の界面配向特性を解析する新しい測定法を開発した。SNOMは、光の波長よりも小さな金属開口のごく近傍に発生する近接場光を照明光源として利用し,回折限界を超えた解像力によって光学的観察を行うことができる新しい測定法である。申請者らは、当該研究年度中に、液晶試料に配向電場を印加しつつ近接場光学イメージを測定することができる特殊プローブを開発し、基板界面近傍におけるネマティック液晶の配向状態を可視化することに成功した。 本研究で開発した液晶配向観察のための要素技術は、次の3つに集約される:1.液晶中でのプローブ位置制御(光フィードバック)、2.電場印加、偏光測定に最適なプローブデザイン(二段テーパプローブ)、3.偏光変化の高感度測定(偏光消光法)。これら従来型SNOMにはない装置デザインを採用することにより、液晶配向転移の電場強度依存性、およびそのデプスプロファイル、液晶配向分布の二次元イメージを、高い空間分解能で観測することを可能とした。 さらに、本研究で開発した偏光SNOMを用い、ネマチック液晶のホモジニアス⇔ホメオトロピック配向転移過程における、液晶電場応答の深さ依存性(デプスプロファイリング)と液晶配向分布の二次元イメージングを行い、またin-plane switching (IPS)セル内における液晶配向状態の変化を印可電場の関数として可視化することに成功した。 本研究の成果は、偏光SNOMという新しい測定法を開発し、液晶界面配向特性世界ではじめて可視化することに成功したことにある。この研究成果は液晶界面配向メカニズムの解明にナノレベルの新しい知見をもたらすものと期待される。なお、これらの研究成果については原著論文2報で報告済である。
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