研究概要 |
高分子材の機械的性質及び強度評価と密接に関連した欠陥の発生及びその進展の予知ならびに高機能性の創生のために,高分子材の寸法依存性挙動を適切に表現し得る構成モデルを構築することを目標として標記の研究を推進し以下の成果を得た. (1)高分子材の下部組織は,高分子鎖のからまりからなる非晶相とそれが配向した結晶相からなっており,かつその非晶・結晶両相のナノスケールの界面層において相変化が生じている.高分子非晶相と結晶相界面のナノスケール構造ならびにその影響領域を分子動力学法を用いて評価し,その有効厚さならびに構造を非晶および結晶混合相のメゾスケールモデルに導入し易い形式で表現した. (2)分子動力学的手法を用いて解明された,高分子非晶および結晶界面のナノスケール構造ならびに有効厚さ等の情報を用いてメゾスケールの非晶および結晶複合相有限要素モデルを構築した.これにより,高分子非晶・結晶複合相の相界面での急激な相変化ならびに相間の相互作用を考慮した複合相モデルの構築が可能となる. (3)均質化法によるマクロモデルの構築により極めて大きな時空的隔たりを回避し,高分子材の寸法依存性挙動を表現可能な新しいマルチスケール構成モデルを提案した。これにより,マクロな環境条件下での高分子材の損傷や破壊の発生を律する微視的な領域での高分子材の変形応答の評価ならびにその制御の途が開けた.
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