研究概要 |
この研究において,個別の公共事業の各時点における総合的な評価手法の基本的な考え方と枠組みを整理した.具体的には,(1)財務表,経済表からなる公共事業再評価の基本体系・右図に示す個別事業の各時点における評価を可能にする評価手法としての会計フレーム・国・地方自治体間等を含んだ全体関係の整理・財務価値と経済価値の換算関係,(2)会計フレームの各項目の計測方法・時価評価による資産計測・財源別機会費用による費用計測,(3)仮想事業によるシミュレーションによる妥当性確認・発生主義の導入による遅延コストの明示・経営指標を援用した事業状況把握を行った. この中で,「事業主体である自治体が市民から税金を徴することは、それに見合う経済便益に相当する行政サービスを市民に提供する義務を負うことである」と考え、財務的な価値と経済的な価値を結びつけている。毎年の行政サービス提供が,その義務に満たなければ,貸借対照表における負債にその分追加計上される.これによって,事業の遅延が負債を産み利子がかさんで,機会費用の損失としての影響が明示される仕組みになっている.また,貸借対照表)資産計測においては,公共事業が提供する便益と密接に関連するためいわゆる時価評価が必要であるとともに,必ずしも市場の評価に供しないものがほとんどであるためにインフラ資産の利用量に応じて価値評価を行う新しい考え方を導入した.これは,利用量の減少によって資産価値が減損することもありうることを意味するものであり,これによって,実際に即した資産評価が可能になった.
|