研究概要 |
初年度である13年度は,内包空気の分子量に着目した定式化及び数値解析プログラムの作成を中心に研究を行った。特異値分解法を用いた内包空気の体積に着目した空気膜構造のインフレート解析についてケーブル要素を用いた解析手法を開発し,その手法を膜構造へ拡張する基礎的な調査を行った。同時に各地の空気膜構造に関する資料を収集した。 14,15年度はインラレータブルストラクチャーの基本的な力学性能を確認するため、直径6mの半球型エアドームを作成し、数度のインフレート実験を行い、インフレート時及びデフレート時の挙動を観察した。膜としては塩ビコーティングされたポリエステル織布を用いた。立体裁断を省略した平面膜によるモデルであったため、補強ケーブルと補強ネットを用いた。 第1回目は約10cmの格子ネットを補強材として用いたが、インフレート後の挙動の観察より、格子ネットは構造上、あまり機能していないことがわかった。 第2回目のインフレート時には補強ネットを省略し、代わりに周辺部分の補強ネットをブレース状に配置することとした。補強上は機能したが、半球状の形状を実現するためにはさらに細かい補強ネットが必要であることが分かった。 第3回目は出入り口として風除け室を持つ約1m x 2mのボックスを用意しこれを取り付けた。正方形の膜面をいっさい切り込むことなく製作したため、出入り口の大きさが充分に取れなかった。また、1回目、2回目に比べ風の強い日であったが、膜面は大きく変形したものの、構造的なダメージは全くなかった。補強ネットは周辺のみに配置することが有効であることがわかった。 第4回目〜6回目の実験は,手作りで折畳式の回転扉を作成し,膜面に切込みを入れて特殊マジックテープによって塩ビシートを介して接続することにより,十分な内圧を維持しながらインフレート状態を保つことに成功した。近畿大学工学部(東広島市)へ輸送し,現地で約3時間でインフレートを行うこともでき,可搬性の要求される宇宙構造物などへの応用の可能性を示すことが出来た。
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