研究概要 |
1)『碁石法』の開発:前年度の成果を受け,入所者の実態とその行動理由,施設に対するニーズを適切に把握するために,施設職員と共同で新たな調査手法『碁石法(仮称)』を開発した。方法として,(1)施設内の場所の写真を使用頻度によって分類,(2)個々の写真の正・負の評価に対する2種類のコインの布置(各最大3枚),(3)それらの理由の質問,という手順を採用した。 2)『碁石法』の実施:養護老人ホームおよび特別養護老人ホームで1名あたり45〜60分の碁石法による調査を実施した。その結果,(1)個々の場所に対して,利用者の意識的な利用頻度とその行動の理由が分かる,(2)単極尺度を2つ設けることで○と×のどちらの評価も適切に把握できる,(3)写真とコインを用いることで入所者から話を聞くきっかけができる,などの特徴が得られた。 3)『キャプション評価法』と『碁石法』の比較:今回の研究で使用した両手法の比較を行い,(1)前者では○の判断が多く後者では×の判断が多い,(2)前者では施設のハード面の評価が多く後者ではソフトの面の評価が多い,(3)前者は楽しんでもらえる方法で後者は不満を聞きだせる方法である,などが分かり,利用者から不満や改善点を聞きだすという目的においては,『碁石法』が優れているということを確認した。 4)施設計画への提案:調査対象となった施設から得られたコメントを基に,既存の施設の改善案,今後の施設計画や施設ケアに関するいくつかの提案をまとめた。
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