研究概要 |
本研究課題は,建築生産全体を視野に入れた「建築物の解体を考慮した設計手法の開発とその実現手段」の開発研究に取り組むものである。前年度までの研究成果から,建築物の解体に最も大きな影響を与える建設発生木材について,建設解体現場だけでなく,地域の林産木材市場などの大きなサイクルの課題が明らかになった。本年度は,京都地域で荒廃の進む林業・林産の実態を把握し,古材の回収・再利用が必ずしも資源循環システムに経済的に寄与しないことを明らかにした。すなわちコストを投下して古材を再利用することが新材需要をますます低迷させ,すでに輸入材に圧迫されている国内木材流通システムに壊滅的な打撃を与えることとなる。その結果,地域の山林の荒廃を招き,かえって環境負荷の増大をもたらすのである。したがって,古材は環境負荷を高めずに廃棄物処理することになる。そこで,古材の処理方法として考えられる技術を収集し,コストと環境負荷等の指標から有効な技術を抽出した。抽出された還元処理とバイオマス処理について先進的な事例を見学,ヒアリング調査,他分野研究者との議論等を通じて集中的に調査分析し,これらの処理の前提となる古材排出条件をまとめた。得られた条件から,木造住宅の設計時に留意すべき点を抽出した。これにより,解体を考慮した設計手法が開発された。今後の課題としては,この設計手法の実プロジェクトでの検証と,さらに有効な還元処理・バイオマス処理の技術開発との連携が望まれる。
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