研究概要 |
β-菱面体晶ホウ素はB_<12>正二十面体とB_<28>ユニットを含むクラスター構造を有し,ホウ素の3中心結合による内因性アクセプターによる局在化準位の形成等,物性発現の観点から興味深い。本研究では,マイクロ波吸収の強いβ-菱面体晶ホウ素に微量の遷移金属原子をドープし,マイクロ波照射による「ホウ素を介在したドープ金属間の相互作用発現」による磁気秩序化について検討した。Mn, Fe, Co, Cuをドープした試料を作製し,X線回折データのリートベルト解析を行った結果,β-ホウ素中の3種のドーピングサイトの占有傾向が遷移金属原子の種類により異なることが示された。磁気測定の結果,2種の遷移金属を同時ドープした試料では,極低温域で反強磁性的相互作用の存在が示唆され,構造解析結果と合わせると,ホウ素を介在した2種の遷移金属間の相互作用によるものであると推測された。Co, Cuを同時にドープした試料では,室温の磁化曲線がヒステリシスを描き,弱い強磁性の存在が示唆されたが,その詳細の解明には至らなかった。一方,電気伝導度はドープした金属の種類,ドーピング量に依らず,いずれもバリアブルレンジホッピング型の温度変化を示した。ドーピングサイトの占有傾向により伝導度の増大,減少が認められ,ドーピング元素が形成する局在化準位の深さに大きく支配されることが明らかとなった。高出力のマイクロ波照射下で合成したFeB_x、では,室温においても強磁性的挙動を示すことが認められた。構造解析結果からは照射前後でFeサイトの占有率,座標には大きな違いは認められず,部分的にFeB相のような強磁性的クラスターが生成した可能性がある。
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