研究概要 |
本研究は、通常のNd : YAGレーザー(波長:1064nm)をテルライト系(TeO_2)およびビスマス系(Bi_2O_3)ガラス等に照射し、光機能性を有する希土類結晶ドットを作製すると共に、ドット形成のメカニズムを解明することである。なお、対物レンズ(x60)で集光し、レーザーの焦点がガラス試料表面にくるようにしてレーザー照射を行った。テルライト系ガラスで得られた成果は以下の通りである。 (1)10BaO-10Sm_2O_3-80TeO_2系ガラスにレーザー照射(パワー:0.5〜0.7W、照射時間:1〜60s)を行うことにより、約3〜45μmのドットが形成され、X線回折よりドットはSm_2Te_6O_<15>結晶相であることを明らかにした。また、レーザー照射をスキャンさせることによる、単結晶ライクな結晶ラインの作製にも成功した。 (2)結晶粒径(偏光顕微鏡で観察)はレーザー照射時間の1/3乗に対して直線的に大きくなることから、Lifshitz-Slyozovモデルの適用が可能であり、レーザー照射による結晶成長は構成イオン(Ba^<2+>,Sm^<3+>,Te^<4+>)の拡散によって支配されていることを明らかにした。 (3)10BaO-(10-x)Sm_2O_3-xLa_2O_3(orEr_2O_3)-80TeO_2ガラス(x=0,2,5)へのレーザー照射では、Sm_2O_3量の減少と共に結晶ドットの粒径は小さくなり、x=5の試料では結晶ドットの形成は偏光顕微鏡では観察されない。レーザー照射による結晶化はSm_2O_3量が8mol%以上必要である。ただし、ガラス試料を150℃に加熱しながらレーザー照射を行うと、Sm_2O_3量が5mol%でも結晶化が起こる。このことは、YAGレーザー照射による結晶化が様々なガラス系へ適用できることを意味している。 (4)結晶ドットのマイクロレーザーラマンスペクトル測定では、ピーク強度はガラスの場合と比べて顕著に大きくなるが、ピークの先鋭化は見られない。このことは、結晶ドットはSm_2Te_6O_<15>ナノ結晶からできていることを意味しており、レーザー照射での結晶化においても通常の電気炉による結晶化と全く同じ結晶化機構が成立していることが明らかになった。
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