研究概要 |
1.ミトコンドリア(mt)ゲノムnad3-orf156領域のヘテロプラズミー解析:D, D2型プラズモンを持つ各種の核細胞質雑種(NC雑種)とその両親を用いてnad3-orf156領域をPCR増幅し、クローンニングした産物の塩基配列を決定し、父親配列を含むヘテロな配列群の存在を明らかにした。ランダムクローンを種類分けし、NC雑種と両親における各配列の相対頻度を測定した。この領域では、複数の母親および父親配列NC雑種に存在し、両親にもヘテロな分子種が存在した。さらに、Dゲノム種を父親として成立したパンコムギにDプラズモンと同一配列が存在することを明らかにした(Genetics 160,2002;Genes Genet. Systems 77,2002)。 2.各種NC雑種および合成パンコムギにおけるnad3-orf156領域のヘテロプラズミー解析:種々のプラズモンを持つNC雑種を対象にnad3-orf156領域を解析し、ヘテロプラズミー現象の一般性を明らかにした。合成パンコムギを用いて、父親型Dプラズモンと同一配列が共通に存在すること、Dプラズモン配列と母親Bプラズモン配列の組換え配列が存在することを明らかにした(Curr. Genet.、投稿予定)。 3.nad3-orf156領域の転写産物と転写後修飾の解析:15mt遺伝子の発現をNC雑種とその両親で解析し、nad3-orf156領域にのみ転写産物のサイズの違いを認めた。orf156(atp8)遺伝子について、種々の組織における転写産物を解析し、ヘテロプラズミックな配列が存在するにも関わらず母親由来配列のみが転写されること、エディティングが核ゲノム支配であることを明らかにし、さらにprimer extension分析で転写産物の転写後切断が核支配であること、およびNC雑種に特異的な切断が見られることを明らかにした(Plant Mol. Biol.,in press)。 4.nad3-orf156領域における組換え型配列の検出:NC雑種と両親で、nad3-orf156領域内のcoxII偽遺伝子と、これと異なる部位に存在するCoxII領域との間の組換えで生じたと考えられる配列の存在を明らかにした(Genes Genet. Systems投稿予定)。
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