研究概要 |
Staphylococcus warneri ISK-1が生産するランチビオティック、nukacin ISK-1について検討した。 1.生合成遺伝子の機能解析:これまで断片的に取得した遺伝子群(nukA, nukM, nukT, nukF, nukE, nukG, orf1, orf7)を再構築し、シャトルベクターにクローニングした。しかしながら、nukacin ISK-1を発現する形質転換体は得られなかった。また、組換えプラスミドを導入した菌において、nukA(nukacin ISK-1前駆体をコードする遺伝子)が転写されていないことが明らかとなった。この結果から、nukacin ISK-1の発現には、nukAの転写調節に関与する他の遺伝子が存在する可能性が示唆された。 2.修飾酵素NukMの精製と局在性:大腸菌で発現させたHis-tag-NukM融合タンパク質を抗原として、抗NukM抗体を作製した。LanMタイプのランチオニン形成酵素としては世界で始めての成功である。ウエスタン解析の結果、NukMは細胞膜に結合していた。 3.生合成に関与するタンパク質の相互作用の解析:酵母のTwo-hybrid systemを用いた結果、NukM、輸送タンパク質NukTはそれぞれ2分子以上が複合体を形成し、NukAはNukMのN末端領域、C末端領域、およびNukTのN末端領域と相互作用していることが示された。これらの生合成酵素複合体は細胞膜に結合していることが示唆された。 4.転写制御機構の解明:生合成遺伝子群の転写単位は、orf1、nukAおよびnukMTFEG-orf7の3つであることが明らかとなった。後者2つのオペロン転写開始点の上流には、いずれも大腸菌のσ^<70>認識プロモーター様の配列が確認された。また、その周辺にresponse regulatorが結合するための明確な反復配列は存在していなかった。
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