組織には炎症、虚血損傷、薬剤効果など活性酸素発生に関連する糧が多数存在している。その他、活性酸素と密接に関わる生活習慣病では活性酸素に対する恒常性を保つための様々な状態変化が考えられる。当該研究はこれら状態変化に着目し生体成分のフォトン検出を行った。その結果、健常入血清のY発光、Z発光基準値を明らかにすることができた。癌、膠原病などの病態患者血清からはXY発光、XZ発光が検出され、自己免疫性疾患で高い傾向にあった。この結果は本研究で開発した活性酸素消去発光が臨床検査、健康診断として適用できることを示唆している。また点滴製剤にも本研究で使用した活性酸素消去発光が適用できることから、点滴製剤および点滴前後の血清を分析することで治療状態の判断の一手段に成りえる重要な知見を得た。また糖尿病患者の透析液にこの発光を応用し、透析患者の延命に寄与する透析液の要因の解明まで研究を進めることができた。その他、手術後の生体成分を分析することで空気中酸素の弊害を明らかにした。これら内容については一般邦文誌に掲載し、医学関係者からも高い評価を得ている。またZ成分作用機構解明の手掛りとして四級アミンの発光を検討した結果、そのフォームを変化させることで試料の活性酸素消去発光を選択的に操作できるようになった。この選択的発光はこれまで活性酸素消去物質として全く知られていなかったデンプンや石鹸などにも適用できた。これら結果はある種の物質が化学反応のみではなく、物理的変化によっても活性酸素消去発光を示すことを示唆しており、生物の物理変化を考えるうえで重要な手掛りを得た。これら一連の結果から活性酸素消去発光による血液分析が健康状態の診断、各疾病に合わせた治療製剤の創出に有効であることが示唆された。
|