研究概要 |
1)LEDパネルを利用して光の強度と周期をランダムに変化する予備実験を実施した結果,供試植物(レタスを想定)の生育に必要な強度が得られず,予定した観測実験が実施できなかった。光強度を高めるための工夫や光信号の周期やデューティ比及び複数葉面へのスポット照射の方法について未だ検討中である。 2)既存の蛍光灯照明を用いた計測実験を継続した結果,次のようなことが明らかになった。 (1)葉面電位センサーを植物体葉面に設置して電位の観測をはじめると,最初の数時間は不安定な時間変動が観測されるが,その後周期的な変動が数十時間つづき,最終的には電位の変動振幅が小さくなる傾向が認められた。この事実をもって,「計測の寿命」の可能性を仮説として取り上げようとしたが,観測値が葉面電位センサー設置による植物体葉面変化の影響なのか,それとも実際の葉面電位を表現しているかの判断は困難であった。 (2)周期的変動部分のみを取り出してみると,8分間隔の明暗周期照射に対する葉面電位の周期的変動が最もゲインの高い結果が得られた。すなわち,明暗周期に対して葉面電位応答の感度が異なることが示唆された。 (3)CAM植物であるCrassulaを供試して周期的な光刺激を与え続けると,葉面電位の相空間パターンが複雑なトラジェクトリから周期的規則的なトラジェクトリへひく込まれるような様相を示す事実を確認した。 (4)一つの植物体で2枚の個葉の葉面電位を同時に計測すると,その周期性が同期する場合と逆位相なる場合が観測された。逆位相とは葉先方向に対する電位差が互いに逆転する現象である。
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