ニワトリのファブリシウス嚢B細胞特異的に発現するchB1分子は、哺乳類CD72と最も高い相同性を示すC-type lectinファミリー分子である。今回、我々はchB1遺伝子の近傍にCD72と高い相同性を有する分子をコードする新たなchB1類似遺伝子(chB1-related;chB1r)が存在することを見いだした。本遺伝子がコードするchB1r分子は分子量約45kDaの蛋白であり、アミノ酸レベルでchB1と48%、マウスCD72と28%の相同性を有していた。遺伝子構造においては、chB1r遺伝子に比べ、chB1遺伝子の方がよりCD72遺伝子と類似した構造上の特徴を有していたが、chB1分子が細胞質内領域に1個しかITIMを有しないのに対し、chB1r分子はCD72との間で高度に保存された2個のITIMを有していた。また、chB1の発現がファブリシウス嚢B細胞ならびにDT40細胞のような未熟B細胞殊に限局しているのに対し、chB1rはより広汎なリンパ組織(ファブリシウス嚢、脾臓、骨髄)および成熟B細胞株でも発現していることから、発現様式においてもchB1rの方がCD72に類似しているものと考えられた。さらに、chB1r分子は、B細胞抗原レセプター(BCR)刺激に伴いチロシンリン酸化され、2個のITIMに変異を入れることにより、そのリン酸化が消失することから、CD72同様、そのITIMを介してBCRシグナル伝達に関与することが示唆された。そこで、高頻度で相同組み換えの起こるニワトリB細胞株DT40を用いて、chB1rおよびchB1を単独あるいは両方欠損したDT40細胞を作製した。さらに、chB1/chB1rを双方欠損した細胞に変異型chB1rならびにchB1を再導入し、BCRシグナル伝達におけるこれら分子の機能の詳細な解析を行っている。
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