研究概要 |
各種組織由来の細胞膜にはスフィンゴ糖脂質やコレステロールに富み,GPIアンカー型をはじめとするさまざまな膜結合型タンパク質を含むマイクロドメインが存在することが明らかとなっている。そのマイクロドメインは細胞内でのタンパク質輸送やシグナル伝達の場としてだけでなく,それを介した細胞間相互作用でも機能していると考えられている。精子細胞膜にマイクロドメインが存在し,それが精子と卵の相互作用で機能している可能性を見いだすことを目的として研究を行った。まず,マウス精巣上体尾部精子を1%トリトンX-100で抽出し,ショ糖密度勾配遠心にょらて低密度の界面活性剤不溶性膜(マイクロドメイン)画分を調製した。すでに作製して精子膜タンパク質ADAM2とADAM3やGPIアンカータンパク質TESP5とPH20などに対する抗体を用いて,マイクロドメイン画分のウエスタンブロット分析を行い,上記タンパク質が精子マイクロドメインに存在していることを明らかにした。これらのタンパク質は精子の卵丘細胞層通過や卵子透明帯通過,および透明帯結合で機能していると考えられており,マイクロドメイン自体が機能ドメインであると判断することもできる。事実,精巣上体精子のマイクロドメインが受精能獲得にしたがって精子赤道部から先体部へと徐々に移動していた。また,精子の卵透明帯通過に関与すると考えられるTESP5も,大部分が活性型としてマイクロドメインに存在していた。次いで,精子マイクロドメイン上にあるタンパク質複合体を上記の抗体を用いて単離することを試みたが,明確な結果を得ることができなかった。おそらく,強固な複合体が形成されており,抗体のエピトープをマスクしている可能性があると考えられる。
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