研究概要 |
脂質滴は内部にコレステロールエステルとトリグリセリドを貯蔵し,外周は燐脂質とフリーコレステロールでできた脂質一重層で覆われている構造である.前年度までの研究により、脂質滴の微細構造は通常の化学固定では保持されないことが確認された.今年度は,従来の急速凍結法を改良し,脂質滴構造を生きた状態のまま高度に保持し,脂質滴構造蛋白質の局在を詳細に明らかにするための方法を確立した. 多数の脂質滴を内在性に持つHepG2細胞などの培養細胞を用い,PBSに溶解した10%BSAでリンスしたのち,少量の同液中で機械的に剥離し,短時間の遠心でペレットにした.Leica社製の加圧急速凍結装置EM-PACTの平板凹型の試料台(底部に小孔があり,底部から加圧されるもの)に1-2ulのペレットをいれ,10um厚の銅板を載せて,試料ポッドに規定の圧力で固定し,急速凍結した.ついでBAL-TEC社製の真空凍結割断装置BAF400にて-115℃で割断し,白金・カーボンレプリカを作製した.常温に戻した試料台からレプリカの付着した細胞ペレットを回収し,2.5%SDS in PBS中で60℃,15分処理した.洗浄後,100u/ml DNase Iで37℃,一晩消化し,さらに25%SDS in PBS中で60℃,15分処理してSDS-FRL法による抗体標識に供した. 上記の方法により氷晶のない試料のレプリカがコンスタントに得られ,脂質滴は膜内粒子のない平滑な割断面を持つ球として認められた.またADRPは凹面として割れた脂質滴に一面に,また脂質滴を横断するように割れた割断面の円周から一定の距離を持つ標識として観察された.今回の方法は,脂質滴だけでなく,化学固定が困難な他の構造にも応用可能であると考えられる.
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