研究概要 |
神経ペプチドであるノシセプチンが仲介する情報伝達は中枢系での疼痛閾値、記憶学習機能、聴覚閾値の生理的調節に関与することが既に明らかにされている。本研究では、分子生物学的および行動薬理学的にさらに詳細な解析を継続し、ノシセプチン受容体欠損マウスでの見かけ上正常な疼痛閾値が補完される機構の解明により、さらにノシセプチン情報伝達の生理的意義を明確にすることを目指した。Differential display法による変異マウスにて発現変動が観察されるmRNAを検索し、転写因子を含む多くのmRNAがその候補として得られた。それうの分子は機能不明なものが多く、現在結果の解釈に苦慮しているが、分子構造や脳内分布を指標に注目される分子を選択し、解析を継続している。また、最近開発されたノシセプチン拮抗薬による記憶学習の改善効果をネズミを用いた共同研究で示し、その成果を論文発表した。 一方、シグナル配列トラツプ法を用いて新規受容体の同定を行ない、BSRP-A, B, Cと名付けたファミリーを形成する蛋白質群とDNERと名付けたEGFドメインをもつ新規受容体様膜蛋白質群を見い出した。BSRPファミリーはノザンブロット法により全て脳に特異的発現をすることがわかり、さらにin situハイブリダイゼーションにてBSRP-A, Bはほぼ全ての神経細胞に発現しているのに対して、BSRP-Cは特に嗅球、線状体で強く発現しており、小脳での発現が認められなかった。
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