研究概要 |
I 前年度に続いてデータ入力とその整理を行なった。有機溶剤や鉛を扱う事業所での三年間の検診データから、結果として同一人の繰り返し受診データを含めて、一般健診:延べ9020名分(非暴露者=対照群を含む)、特殊健診:延べ7938名分(トリクロロエチレン関連:2971名、テトラクロロエチレン関連:94名、スチレン関連:540名、トルエン関連:2408名、鉛関連:1925名、すべて延べ数)の健診結果をデータベース化した。一般健診では、問診項目(性、年齢、現病・既往歴、自覚的神経症状、生活習慣など)、体格、血圧、心電図所見(心拍数、不整脈の有無、PR QRS,QT,QTc時間など)などを、前記化学物質への暴露者に対する特殊健診では、作業歴や各々の物質への暴露指標として、有機溶剤暴露者ではその代謝産物である総三塩化物、マンデル酸、馬尿酸の尿中濃度および鉛暴露者では血中鉛濃度などを得た。現在、両データの個人間マッチング作業に手間取っている。これらのデータは労働安全衛生法による一般健診と有機溶剤・鉛作業者に対する特殊健診に基づいている。 II 心電図に関する一般集団での基礎データを得るため、Iとは別の健康者(現病および心電図異常がない)、男約8000名、女約5000名について、今回特に注目した心電図上のQTc時間(延長=末梢神経障害指標と考えられる)と生活習慣や血清指標との関連性を調べた。この結果、QTc時間の延長因子として、女性、加齢、血圧高値、血糖高値などが示された。飲酒、喫煙、運動などの生活習慣はQTc時間と関連性がなかった(このデータは発表準備中)。今後、このデータを基礎として、Iのデータを用いて有機溶剤・鉛暴露と心電図所見(=神経障害指標)の関連性を示す予定である。 付 データ収集にあたっては健診機関の協力を得ながら、健診受診者のプライバシーに充分配慮し、個人を特定できる情報は何ら使用しておりません。
|