研究概要 |
サイクリン依存性キナーゼインヒビター(CDKI)p16^<INK4a>もしくはp21^<Cipl>遺伝子導入による滑膜への細胞周期制御療法は、慢性関節リウマチ(RA)動物モデルの関節炎に著効し、滑膜組織での炎症性サイトカイン産生を抑制した。そこで、p21^<Cipl>による細胞周期制御療法の分子的基盤を明らかにするため、RA由来滑膜線維芽細胞(RSF)にp21^<Cipl>遺伝子を導入した時の種々の遺伝子発現の変化を解析した。そのために、先ず、RSFを培養し、p21^<Cipl>アデノウイルスもしくは挿入遺伝子のないアデノウイルスを感染させ、IL-1βとTNF-α刺激下ないし無刺激下において、DNAアレイにて遺伝子の発現変化を解析した。発現が変化した遺伝子の中から、RAの病態に関与すると考えられる遺伝子を選び、ノーザンブロット、ウェスタンブロット、ELISA法などで確認した。その結果、RSFにp21^<Cipl>遺伝子を導入すると、type I IL-1 recept or(IL-1R1), macrophage chemotactic protein(MCP)-1, cathepsin B, Kなどの分子の発現が減少していた。また、p21^<Cipl>を強制発現させたRSFにおいては、IL-1βとTNF-αとの刺激によるIL-6, IL-8, macrophage inflammatory protein(MIP)-3α, matrix metalloproteinase(MMP)-1, MMP-3の産生が抑制されていた。これらの分子の発現抑制には、activator protein(AP)-1の転写活性抑制やIL-1R1の発現低下が関与していると考えられた。従って、p21^<Cipl>細胞周期制御療法は、CDK活性抑制による滑膜増生の制御以外に、炎症や骨軟骨破壊に関与する分子の発現を減少させる作用を介して、関節炎治療効果を発揮すると考えられる。
|